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2026.05.28INTERVIEWCOLUMN

(後編)生活も仕事も住むところも、全部つながっているのがいい

兄弟の秘密基地で遊んでいる様子

TABOTENZUが出会った「タフラフ」な人に聞く、子育てや生活のカタチについてのインタビュー。大事にしていることや譲れないこと。
一方で「まあいっか」とポジティブに手放してきたことなど。
芯をもちながら、肩肘張らずにありのまま。そんな暮らしを語ってもらいました。

顧 彬彬(コ ピンピン)さん
中国杭州生まれ、東京育ち。東京都谷中在住。
家族は夫の宮崎晃吉さん、長男の照路(てるみち)くん(9才)、次男の拓路(たくみち)くん(5才)、ピンピンさんのお母さんの5人暮らし。 夫の晃吉さんと共同で、一級建築士事務所が母体となった株式会社 HAGISOを運営。1955年築の木造アパートを改修した“最小文化複合施設”「HAGISO」や、asatte のジェラートなど複数の飲食店を運営し、グラフィックデザイン、ギャラリーの企画、自社店舗のディレクション、スタッフのマネジメント等を行っています。※年齢は取材時のものです。

顧彬彬(コピンピン・以下ピンピンさん)さんが夫の晃吉さんとともに東京・谷中に〝最小文化複合施設〞「HAGISO」をスタートさせたのは2013年のこと。カフェ兼ギャラリー兼設計事務所としてはじめた場に宿泊施設が加わり規模が大きくなったのは2015年。数名だったスタッフも増えて事業が大きく変わりはじめたのと同時期に、長男の照路くんが誕生しました。

前編のインタビューでは、お子さんの誕生で仕事や一緒に働く人との向き合いかたに変化があったお話や、4人家族になり家族のチーム感が増したお話などについてうかがいました。
今回はインタビュー後編です。

親以外の大人との関わりで気づけたこと

長男くんは小学生ですが、お子さんに家のことをやってもらうこともありますか?

親から「お手伝い」として頼むことはしないのですが、長男は親が毎朝コーヒーを淹れているのを見ていて、小学校に上がる直前ぐらいに「自分でやりたい」って言い始めて、毎朝淹れてくれるようになったんです。うちはお小遣いをあげていないので、コーヒーを淹れたら100円とか200円をあげるんです。続けていくうちに自分でコーヒー屋さんの看板を作り始めて。HAGISOと同じく私たちが運営しているジェラート屋さんの一角に、スタッフや地域の人がチャレンジショップができるスペースがあるんですが、「そこで(コーヒー屋さん)やってみる」って言って、不定期ですが長男がお店を出すようにもなりました。もう15回くらい出したかな。

兄弟の秘密基地で遊んでいる様子

「秘密の部屋」と呼んでいる兄弟の秘密基地。壁には絵の具やクレヨンで自由に絵が描かれている。

すごいですね。家のことで興味を持ったことが、仕事としてやってみることにまでつながっている。

もちろんひとりで全部はできないので、私も横に立っているんです。そうすると口出ししたくなるんですよ。「蒸らすの長くない?」みたいなちょっとしたことを(笑)。ほかにも彼はちょっぴり人見知り気質なので、ドリップはできるけど「いらっしゃいませ」が言えない、みたいに親として気になってしまうところはあって。ただ、あるとき私の代わりにうちのスタッフに横に立ってもらったんです。そうしたらスタッフが「テルちゃん、ちゃんとできてますよ」って言ってくれたんです。親と一緒にいると、甘えや恥ずかしい気持ちが織り交ざってしまうんでしょうね。私が一緒にいないときの方が自分で考えて、進められる。家や家族の外に出て、子どもだけで他人と何かをすることで気づけたことです。

お子さんたちの食器の写真

お子さんたちの食器。汁椀は漆塗りのいただきもの。離乳食を食べる前は舐めても良いおもちゃとして、ごはんを食べ始めたころから大事に手入れしながら9年ほど使っている。

照路くんがハンドドリップをしている写真

長男の照路くんが店主の「てるてるこうひい」。ハンドドリップも慣れた手つき。

谷中名物「ご自由にどうぞ」の写真

谷中名物「ご自由にどうぞ」。使わなくなった持ちものを「ご自由にどうぞ」の札と共に家の前に出しておくと、ほしい人が自由にもっていく。ピンピンさんも定期的に子ども服や靴などを出している。

ピンピンさんご一家は、お仕事以外にも他人との関わりが多そうです。

谷中という土地柄、自然と多くなっているかもしれません。古くからの町屋や商店街やお寺があって、住んでいる人たちとの距離が近い。谷中に住むようになって、通りすがりで知り合いに会ったり、近所の方々と一日に何度も挨拶できて、私はそれがすごく幸せなんです。挨拶だけで満足感にひたれる感覚ってこれまでなくて、そういう街で子育てをするのってすごく素敵だなと思ったんです。

生活も仕事も住むところも、全部つながっているのがいい

子どもがいると、暮らす場所への目線も変わってきますね。

そうですね。ほかにも、谷中にいると大人の目がちゃんと子どもに向いているのを感じます。自転車がちょっと車道にはみ出して止まっていたら「あぶないよ〜」って当たり前のように声をかけたり。いまは、うかつに叱れないご時世ですけどここはそういうのが言い合える。自分の知らないところで、親以外の他人とも関わって成長していくのは私はとてもいいと思います。

顧彬彬さんがお話ししている様子

それから、我が家の兄弟は性格や興味も違うので、接し方や声のかけ方はそれぞれに合わせていますが、「人には多様性がある」ということは共通して伝えたいと思っています。世の中には自分の家族だけじゃなくいろんな人がいる。ときにはいやなこともあるけれど、いやだからそっぽを向くよりは良い距離を作れるようになってほしいんです。
そのためにできるだけ私たち大人が日々たくさんの人と関わって、その姿を見せたい。私にとって子育てとは、子ども中心の生活や「教えるもの」ではなくて、「子どもを育てているようで、実はただ一緒に暮らしているだけかもしれない」という感覚の方が近いかもしれません。私たち大人の暮らしかたや周りの人との接しかたが、一緒に暮らす子どもたちの身体にいつの間にかしみこんでいく。そしてそれがその子なりの価値観を形作っていくんだと思っています。だから子どもとの生活も仕事も住むところも、全部が近くてつながっていて、子どもがそれを感じながら育っていく形が自分たちには合っているなと思うんです。

ダイニング風景

お話を伺ったダイニングは、リビングから一段上がった構造が印象的。窓と壁沿いに作られたベンチは大人数でも気軽に腰掛けられ、ピンピンさんやお子さんたちと一緒に会社のスタッフがここで夕ごはんを食べることもあるそう。

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